リハビリ太郎の役立つ運動・健康ブログ

リハビリテーションに関する最新の知見から運動や健康に関する役立つ情報を発信していきます。

運動(有酸素運動)は脳(海馬)の容積減少を抑制できる!?

■はじめに

 

皆さん、こんにちは。リハビリ太郎です。

 

 

このブログでは、大学病院で日々臨床と研究に従事している理学療法士が最新の知見から運動が健康に及ぼす効果や、疾病予防における効果などについて述べていくブログとなっています。

 

 

少しでも興味がある方は、以前の記事も読んで頂けると幸いです。

 

 

 

さて、本日は運動が脳の大きさに与える影響について述べていこうと思います。

 

 

以前の記事で、運動によって認知症の発症を予防出来る可能性があることを書きましたが、今回は実際に運動によって脳の大きさに変化が生じるかという観点になります。

 

 

 

運動による認知症の発症予防に関する記事をリンクで貼っておきます。興味がある方は確認して頂けると幸いです。

 

 

https://blog.hatena.ne.jp/rehabili_taro/rehabili-taro.hatenablog.com/edit?entry=26006613717865363

 

 

 

では、運動が脳の大きさに与える効果について一緒に勉強していきましょう。

 

 

「脳の萎縮は加齢により生じるものであり、しょうがない」

「脳の萎縮の進行を止める方法なんてない」

 

 

 

このように思う方も多いかもしれません。

 

 

 

しかしながら、近年では、脳の萎縮を抑制する可能性がある様々な介入方法や生活習慣などが明らかとなってきています。

 

 

 

その中にはもちろん運動も入っており、運動が脳の容積(大きさ)に与える効果に関しての検証も進んできています。

 

 

 

本日の内容の結論から言うと、運動は加齢による脳の萎縮を抑制出来る可能性があります。特に、自転車などを用いた有酸素運動により、脳の記憶を司る海馬という部分の萎縮が抑制出来る可能性が最近では報告されています。

 

 

それでは、研究の内容と結果を確認しながら、運動が脳の大きさに与える影響について一緒に勉強していきましょう。

 

 

 

 

 

■研究の内容

 

今回は、2018年にFirthらが有酸素運動が、脳の海馬領域の大きさに与える効果について、複数の研究を統合し、まとめる研究方法であるメタ解析を用いて検討した論文を参考にしたいと思います。(Firth et al, NeuroImage, 2018)

 

 

下記に論文のリンクを貼っておきますので、ご確認下さい。

 

www.sciencedirect.com

 

 

近年、動物やヒトにおける実験において運動には、脳の成長因子であるIGF-1やBDNFを産生させることで、脳の萎縮予防に効果があることが分かってきました。

 

 

そこでこの研究では、主にはヒトにおける有酸素運動(自転車やウォーキングなど)が、脳の領域の中で、記憶に関係する海馬の容積に与える影響について調査しています。

 

 

 

 

メタ解析の対象となった論文は、14個のランダム化比較試験(対象者737名)としています。

 

 

 

比較方法としては、有酸素運動群(自転車 or ウォーキング or ランニング)とコントロール群(運動しない or ストレッチなど)で海馬の容積(脳MRIで評価)に変化が生じるかを検討しています。

 

 

 

対象となった論文における有酸素運動の期間としては、3-24ヶ月で運動頻度は2-5回/週でした。

 

 

 

結果を下記の表に示します。

 

 

黒丸が効果量を表し、黒線は分散を表しています。黒丸と黒線が0よりも大きい値を取れば、コントロール群(運動しない or ストレッチなど)と比べて有酸素運動が海馬の容積増加に有効であると解釈することが出来ます。

 

 

 

 

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今回の結果では、コントロール群と比べて有酸素運動において、左海馬の容積の増加に有効である可能性が示唆されました。一方で、右海馬や海馬全体の容積については、有酸素運動統計学的な有効性は確認されませんでした。

 

 

 

また、この論文の筆者らは、どのような人々(健常人、精神病疾患者、認知症患者など)に有酸素運動が海馬の容積増加に有効であるかに関してもサブ解析を行っており、上記のような傾向は健常高齢者において効果的であったことも報告しています。

 

 

 

この論文では、有酸素運動群の方がコントロール群に比べて、海馬(特に左)の容積が大きくなる傾向を示しましたが、対象となった論文の結果を見てみると、有酸素運動を行った人々の海馬の容積は介入前後で変わっていませんでした。

 

 

一方で、コントロール群では海馬の容積が小さくなっている傾向でした。

その結果として、有酸素運動群の方がコントロール群よりも海馬が大きくなってたと考えられました。

 

 

 

つまり、有酸素運動は海馬の容積を増加させるのではなく、加齢に伴う海馬の萎縮を予防する可能性があることをこの論文の筆者らは述べています。

 

 

 

 

なぜ、有酸素運動は特に左海馬の容積の維持に有効なのかについては、この論文では詳しくは述べていませんが、有酸素運動は加齢による脳(海馬)の萎縮を抑制出来る可能性があり、その結果として、認知症発症予防に繋がる可能性が今回の論文から推察されますね。

 

 

 

身体の健康はもちろんのこと、脳の健康のためにも運動は重要であると言えそうですね!

 

 

 

■まとめ

 

有酸素運動は脳(海馬)の加齢に伴う萎縮を抑制出来る可能性がある

・特にその効果が健常高齢者において認めやすい

・脳の健康維持のためにも運動は非常に重要な側面を持つ