家で出来る簡単な運動でも健康に良いのか?
■はじめに
皆さんこんにちは。
リハビリ太郎です。
今日も運動と健康に関する内容を最近の知見を参考に書いていきたいと思います。
ここまで、運動が健康や認知症予防に与える有効性に関して述べてきました。
皆さんもご承知の通り、運動が健康増進に与える影響は多いと言えると思います。
また、内服薬のように副作用等もほとんど無いため、運動は言い換えると健康に効く副作用のない薬であると捉えても過言ではないと考えています。
では皆さん、運動は健康に良いと分かって、いざ健康増進目的に運動をしようと思っても次のようなことを考えてしまうのではないでしょうか?
「運動するにしてもジムに行ったりとかしないと効果ないんじゃないの?」
「特別な器具や環境を用意する時間もお金もないから運動なんて始められない。。」
確かに運動は良いと言われても、どの程度の負荷(ジムの機械 or 自重)や頻度(週何回)で実施すれば良いかは疑問に思いますよね。
特に現代社会では、忙しくジムに行ったり、毎日運動することは難しいという人も多いはずです。
今回はそのような疑問の解決に役立ちそうな、2018年に掲載された論文から、運動、特に筋力増強運動、いわゆる筋トレの強度や頻度の違いが健康にどのように影響するかに関して述べていきます。
結論から言うと、ジムに通って特別な機械を使って運動しなくても、家でも出来る自重による筋トレ(スクワットなど)を週2回程度行えば、ジムでの筋トレと同程度の健康増進効果がある可能性があります。
今日も一緒に勉強していきましょう。
■研究の内容
本日は、2018年にStamatakisらが発表した筋力増強運動が健康増進に与える影響を11個の研究から検討した論文を参考にしたいと思います。(Stamatakis et al, Am J Epidemiol, 2017)
下記に論文のリンクを貼っておきます。ご確認下さい
https://academic.oup.com/aje/article/187/5/1102/4582884
この研究では、11個の観察研究(対象者80306名)を統合し主に筋トレが死亡率低下に与える影響に関して調査しています。
方法としては、研究開始時に最近1ヶ月間の運動を質問し、そこから1週間にどの様式(ジム or 自重 or 両方)の筋トレをどのくらいの頻度で行っているかについて分類し、その後の死亡率との関連性をそれぞれ検討しています。
また、この論文の筆者らは筋トレと同様の方法で身体活動量(歩行などのいわゆる有酸素運動)の時間や頻度も調査しています。
さらに、この論文の筆者らは、質問の結果から、1週間における筋トレと有酸素運動の頻度が、世界保健機構(WHO)が提唱するガイドラインを満たしている者と満たしていない者にも分け、それぞれ死亡率との関連性も検証しています。
つまり、世界的に提唱されている運動を日々している人と、していない人で健康増進に差はあるかどうかを論文の筆者は調べています。
下記にWHOが提唱する筋トレと有酸素運動の頻度を記載しておきます。
(World Health Organization. Grobal Recommendations on Physical Activity for Health. Geneva, Switzerland: Word Health Organization; 2010)
・筋トレ:週に2回以上
・有酸素運動:週当たり合計で中強度の運動150分、もしくは激しい運動75分以上
■結果
まず筋トレの種類(ジム or 自重 or 両方)が全死亡率に与える影響を表に示します。
表の横軸はハザード比を示しており、運動習慣の無い人を基準(赤点線)とし、それぞれ左に散布されるほど死亡する確率が減少すると考えて頂ければと思います。
表から分かるように1週間でジムと自重トレーニングを両方行っている者は運動習慣のない者と比べて全死亡率が49%程度低下する結果となっていました。
この結果からジムでの運動と自重での運動を組み合わせることが健康には重要である可能性が示唆されます。
また、自重での筋トレのみを行う者と、ジムで筋トレのみを行う者も運動習慣なしの者と比べて全死亡率が、それぞれ23%、25%も低下することも明らかとなりました。
ここで着目して頂きたいのが、自重(スクワットなど)およびジム(マシンなど)での筋トレが死亡率減少に与える効果は、同程度であったとのことです。
つまり、ジムなどに行く時間やお金などの余裕がないような方であっても、家で出来るような簡単な自重を使った筋トレを行うと健康増進に繋がる可能性があるということです。
何もジムに行かなくても、今すぐ出来るような筋トレを続けることが将来的には健康に繋がるかもしれないわけですね。
では次に、先ほど示したWHOが提唱する運動頻度を遵守出来ているかどうかで健康に与える影響が変化するかに関して、論文の結果を下記の表に示します。
こちらの結果も、WHOが提唱する筋トレと有酸素運動のガイドラインを達成できていない人に比べて、筋トレガイドラインのみ、有酸素運動ガイドラインのみ、筋トレと有酸素運動ガイドラインを両方ともに守れている者は、死亡率が減少する傾向であることが分かりました。
ここでも着目したいのは、筋トレのガイドラインである週2回を守れている者の内で、運動の種類(ジム or 自重)による違いは認められなかったということです。
つまり、家でも出来る自重での運動を週2回以上行えば、健康増進に繋がる可能性があるということです。
健康増進には、ジムに毎日通ったり特別な機材を揃える必要はなく、スクワットなどの運動を週2回続けていくだけでも十分に効果が期待出来るかもしれませんね。
運動の取っ掛かりが欲しい。運動はしたいけど毎日忙しい。などという方は、週2回の自重トレーニングから始めてみるのも良いかもしれませんね。
■まとめ
・筋トレには健康増進効果が期待出来る。
・自重による筋トレ(スクワット)でも健康には良い影響を与える可能性がある。
・週2回の自重トレーニングから始めてみてはいかがでしょうか。