リハビリ太郎の役立つ運動・健康ブログ

リハビリテーションに関する最新の知見から運動や健康に関する役立つ情報を発信していきます。

運動は薬である

■はじめに

 

皆さん運動はしていますか?

 

この質問にすぐ答えられる人はどのくらいいるでしょうか?

 

「運動が健康に良いのは何となく分かっている」

「でもなんだが運動を始める気にはならない」

「本当に運動ってそんなに大事なの?」

 

こんな人も多いのではないでしょうか?

 

 

かくいう私も運動を患者様や利用者様に提供する立場で、運動療法に関してある程度の知識がありながら、働いてからほとんど運動せず過ごしていました。(最近はジムに行っていますが。。笑)

 

 

話が逸れてしまいましたが、これまでの知見や理学療法士として運動を提供する立場からアドバイスさせてもらうと、日常生活の中で運動は必ず取り入れた方が良いです。

 

 

なぜなら、運動は筋力を付けたり、体力を付けたりする効果はもちろんですが、近年では様々な疾患の発症予防にも関連しているとの報告が多くあります。

 

 

「Exercise is Medicine」

 

 

つまり運動は多くの病気の発症や進行を抑える可能性のある薬なのです!!

しかもほとんど副作用がなく、費用もかからない魔法の薬と言っても過言ではありません。

 

 

このことを知ると日常生活の中に運動を取り入れたくなりませんか?

人が何かを始める時には動機付けが重要であると考えられます。

すなわち、「運動ってよく分からないけど体に良いんだよね?」というような抽象的な印象ではなく、しっかりとした運動の効果を知った上で、行動に移す方が運動習慣の形成には有効に働くと思います。

 

「じゃあどのくらいの運動をしたら良いの?」

「仕事が忙しくて毎日なんて運動できない」

 

 

そんな人も多いのではないでしょうか?

 

 

確かに毎日運動を続けることは重要であると思いますが、近年では、週1,2回もしくは週末だけ運動を行うだけでも健康に対し有効に働くことが明らかとなっています。

 

本日は運動療法における病気の発症や進行の予防および運動回数と健康との関連性に関する報告を紹介することで、皆様が無理せず日常生活に運動を取り入れるきっかけになれば幸いです。

 

 

 

 

■運動による病気発症の予防

今回は、2017年にO`DonovanらがJAMA International Medicineに投稿した論文を参考にし話を進めていきたいと思います。

(O`Donovan et al. JAMA Inter Med. 2017)

 

 

論文のリンクを下記に貼っておきます。

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2596007

 

・研究の概要

近年、運動は健康に対し有効であることは明らかとされていますが、現代の社会においては、仕事などのため、毎日の運動が困難な人々も多く、週末のみ運動する人々("Weekend Warrior")が多いことも特徴です。

 

 

そのような週末だけスポーツなどの運動をすることが健康にどのような影響を与えるか、また1週間の内で、週末のスポーツなども行わず、軽い運動(自転車など)のみ数日行うことが健康において有効かどうかをこの論文では調査しています。

 

研究の対象期間は1994年から2012年までの間としており、対象者は40歳以上の大人63591名と非常に大規模な調査となっています。

 

 

方法としては、調査前に対象者に対して、性別や身長、体重、基礎疾患などの基本情報に加えて1週間における運動習慣(週何日、何分間)を質問紙票で評価しました。

 

 

その後、1週間における運動習慣からこの論文の筆者らは、対象者を下記に示すように4つの群に分け、これらの運動習慣が、全死亡率や心血管疾患での死亡率、癌での死亡率とどのように関連するかをコックス比例モデルを用いて検討しています。

 

 

群分け

1. inactive群:1週間の内、中等度〜激しい運動を全くしない

2. insufficently active群:1週間の合計で中等度の運動150分未満および激しい運動が

             75分未満

3. Weekend Warrior群: 1週間の内、150分以上の中等度の運動もしくは75分以上の

                                          激しい運動を1回もしくは2回行う

4. regularly active群:1週間の内、150分以上の中等度の運動もしくは75分以上の

                                      激しい運動を少なくとも3回以上行う

 

仕事や家事などのルーティンでの活動時間は含まれていません

 

 

・結果

 

この研究では表1 に示す通り性別や年齢、対象者の仕事や、基礎疾患で調整し検討すると、1 週間の内、全く運動しないInactive群と比べて、Insufficiently active群およびWeekend warrior群、Regularly active群では全死亡率や心血管疾患、悪性新生物による死亡率がおおよそ20〜30%低下するという結果を示しています。

 

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つまり、週に中等度の運動(自転車など)や激しい運動(スポーツなど)を少なくとも1日以上行う習慣がある人は、全く運動習慣のない人と比べて心血管疾患や癌による死亡率が低下する可能性があると解釈できます。

 

 

さらにこの研究の筆者らは、1週間の合計で中等度の運動150分未満および激しい運動が75分未満であるInsufficiently active群に着目し、Insufficiently active群の中で1週間の運動頻度が1もしくは2回の群と、運動頻度が3回以上の群に分け、同様の解析も行っています。

 

 

つまり、1週間の合計運動時間が少ない群において、運動の頻度が健康にどのように関連するかを検討しています。

 

 

結果を表2に示します。

Insufficient群において週1回もしくは2回の運動頻度においても全く運動しないInactive群と比べると死亡率がおおよそ20〜30%低下することが明らかになりました。

 

 

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 つまり、少ない運動時間で運動頻度が1,2回/週というような人であっても、心血管疾患や癌による死亡率を低下させ、健康を増進出来る可能性が示唆されます。

 

 

 

筆者らは、対象者の運動習慣を、調査前(1番最初)のみしか聴取出来ておらず、その後の運動習慣がどのように変化し、死亡率と関係したか分からないことがこの研究の限界点としつつも、少ない頻度での運動においても死亡率を下げる可能性があり、忙しい現代社会においても運動を少しでも取り入れることが重要であると述べています。

 

 

 やはり運動は死亡率を下げる薬の作用を持っています。しかも、少ない頻度でもその効果を享受出来る可能性があります。

 

 

やらないわけにはいかないですね!!笑

皆様も忙しい毎日だとは思いますが、少しでも良いでの日常生活に運動を取り入れ健康的な毎日が送れるように一緒に頑張ってみましょう!

 

 

 

・まとめ

●運動習慣は心血管疾患や癌による死亡率を下げる可能性がある

●少ない運動時間や運動頻度においても死亡率を下げる可能性がある

●忙しい毎日に運動を少しずつ取り入れることが重要である